9月の園だより
7月暗唱聖句
「沖に漕ぎ出して網を降ろし、漁をしなさい」 ルカによる福音書5章4節
園長 本田栄一
この間、日本と韓国とのあいだで市民の交流が中止になり、観光客が激減していると報道されています。日韓相互の交流が深まってきているときに政府間の対立が原因で民間の交流にまでマイナスの影響を与えることは残念です。
8月15日は韓国では「光復節」と呼ばれ、日本の植民地支配から解放された記念日です。日本の「終戦記念日」とは違います。
この違いがわかるには近現代史を学ぶ必要があります。私も、在日コリアンの友だちが出来てから、勉強しました。なぜ、在日コリアンの人びとが住むようになったのか、歴史的経緯を知りたくなったからです。
韓国にも出かけて近現代史を学ぶセミナーにも参加し、植民地支配の実態を知りました。「無知から偏見が生まれる」と言われますが、歴史を学んで「目から鱗」の経験をしました。
今回の発端である「徴用工問題」も、日韓双方の歴史認識の違いがあります。日本は朝鮮半島や台湾を植民地支配し、さらにアジアの国々を侵略し、甚大な被害を与えました。その戦争犯罪は東京裁判で裁かれました。戦争による罪責をアジアの人びとに許され、新憲法のもとに出発したことを8月15日には想起し、いまも被害を被って苦しんでいる人びとの痛みを想像する心を大切にしたいと思います。
そのためにも、近現代史を学ぶことが求められています。
今月の聖句は、イエスが弟子になる前の漁師たちに呼びかけた言葉です。夜通し、漁をしてもどってきたところ、「もう一度、沖に漕ぎ出して網を降ろしなさい」と言われた場面です。イエスの言葉に戸惑いながらも彼らは従ったのです。
漁に出て徒労に終わったにもかかわらず、再挑戦の呼びかけを受け入れるかどうかです。
同じように「徒労にしか思えない現実」に遭遇することが私たちにもあります。
「これ以上、挑戦しても無理だ」と投げ出したくなる場面です。しかし、イエスはあきらめないで、「もう一度、沖に漕ぎ出せ」と私たちにも向けられている声です。
理不尽な現実に直面して自信を失いそうになるときがあります。そのようなときに、「もう一度、チャレンジしてみよう」と応答できる柔軟性を持ち合わせたいと願っています。